ヤハズエンドウの矢筈要素を考えた話 #
「何が矢筈なのか」を考えていたのですが大事なのは「矢筈とは何か」の方だったのかもしれません
自分は普段カラスノエンドウと呼んでいますが、標準和名はヤハズエンドウなあの植物です。最近変異個体らしきものを見つけたので色々と重点的に観察しようと思っているのですが、そのうちに「結局こいつの名前はどうして付いているのだろう?」という疑問が大きくなり、自分なりに考えた話です
あくまで個人で考えた話なので間違っているのかもしれませんが、自分の中では結構腑に落ちたので記録して遺しておこうと思います
ヤハズエンドウはどういう葉をしているのか #
小葉を指してヤハズと呼んでいるのは間違いなくて1、キーとなるのはこの先端の窪みのはずだろうと。実はこの窪みにも個体差があって、自分が追いかけている変異個体のようなものではほぼ見られなかったり
一方で、そういう個体であっても生育初期の葉では結構な窪みがあったりと様々です
そもそも「矢筈」とはどういうものなのか #
後から考えるとここに落とし穴があったのですが……
現代ではプラスチックで出来たパーツだったり
古墳時代のものでは銅製のものが発掘していたりと、時代によって材質は変わっていますがその形状は大きく変わっておらず、弦をひっかけるために漢字の凹のような溝のある形状をしています。でもヤハズエンドウの葉を見てもここまで明確な凹みをしているものは見られず、 矢羽根なら分かるけど矢筈とはどういうことなのだろう? と自分はずっと気になっていたのでした
もう1つの「矢筈」 #
元々は上で書いたような部分を指して矢筈としていたのですが、そこから似たような形状を持った道具においても矢筈という名称がついたもの2があったり、弓矢の矢における矢筈であっても
家紋での「矢筈」は、そこからの派生なのか3矢筈というよりも矢羽根の部分を図案化して矢筈と呼んでいるようです
そういう世界もあることを矢筈について考えているうちに知って、またヤハズエンドウの小葉の形状を矢羽根のようだとは感じていたのでもしかしてそういう意味での矢筈なのか?というところに可能性を感じていたことがまず自分の中で仮説として浮かんだところに、次の段落の話が来ます
別の『ヤハズ』を名に冠する植物からの補強 #
ヤハズエンドウの矢筈要素が分からないとTwitterに投稿したところいくつかリアクションを頂いて、その中で話題に登場した植物で
- ヤハズススキ (ススキの斑入り葉のもの)
- ヤハズソウ (マメ科ハギ属の雑草)
のような、他にもヤハズの名前を関する植物の存在を知り……これらの形状や模様を見ていると、明らかに 「矢羽根を指した意味での矢筈」 を想定してのヤハズ〇〇ではないかと思えたのです。そうなってくると話は元に戻って、ヤハズエンドウの名前もやはり家紋における矢筈であり、矢の端にある弦をひっかけるための部位である矢筈ではないという
そもそも矢筈という言葉でイメージするものの共通認識がもてていない
ことに起因して「なんでこれが矢筈なんだろう」という感想を自分は抱いていたのではないかと、そう結論付けました。『小葉の形状を矢羽根に見立てました』という話なら充分納得できます。ただ矢羽根をイメージして矢筈とつけることに納得しているかとなると……こうやって頭を悩ませるほどには通じていなかったのでどうなんだろうなぁと個人的には思います
これから考えたいこと・調べたいこと #
- そもそも誰がヤハズと言い出したのか
- 古い本を見れば分かるのでしょうか、そういうところも気になるのでいつか調べたい
- 他の「ヤハズ」を関する植物はどうなのか
- ヤハズマンネングサのように、自分がイメージしていた方の矢筈を連想して命名された植物もあるようなので、どっちのヤハズがどれぐらいあるのか?というのもこうなってくると関心として出てきます
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例えば、三河の植物観察( https://mikawanoyasou.org/data/yahazuendou.htm)では『小葉は有毛、先端が矢筈(やはず)状に浅く凹む。』のような記述あり ↩︎
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掛け軸を掛けるための道具(本来の名称は掛け棹)なども矢筈と呼ばれるそうです ↩︎
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リンク先のサイトの「矢」のページ( https://kamondb.com/object/153/)には矢筈部分も意匠に入った家紋が見られます ↩︎