アズマツメクサ、まさかの2種混生

February 11, 2023
野外観察記録
ベンケイソウ科, アズマツメクサ属
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今回出会ったアズマツメクサたち #

発見できたポイント数的な面ではあまり大きな成果はなかったのですが、これまで未調査だった自治体にて発見できたという点でひとつ成果があり、そしてとんでもない場所を見付けたのでアズマツメクサの仲間たちへの理解が深まったような……余計に分からなくなったような……そんな1日でした

とんでもない空間の前に #

同じ市にて普通の?シチュエーションでも遭遇していました。道路から田んぼへと入っていくためのスロープ、あそこの終端付近です。田んぼの端っこで出現しやすいのでこういう場所にもよくいます

個体数は少ないですが

この田んぼにて2個体に出会うことができました

これ以外の田んぼでも探してみたのですが、今日の探索範囲においては田んぼでは発見できず……茶畑にいて近くの田んぼで発見出来なかった宇治市よりはマシな成果ではあるかな、と思いつつ……次の目的地へと移動している途中で突然すごい場所に出会ったのです

こちらが本題、まかさの混生 #

どばーっと

本当にどばーーーーっと真っ赤になるほどアズマツメクサのいる畑があったのですが

その集団を見ているとなんだか盛り上がり、葉の雰囲気の違う個体がいるなと。最初はこれを見て(開花が近づくとこんな姿になるのか?)などと呑気なことを考えていたのですが……

いやいやこれよく見るとどう考えても別の植物じゃないですか!

ということで、こいつは過去にこのブログでも触れている コケマンネングサ (Tillaea muscosa) ですね。ちょっと考えればすぐに気付けるのですが、まだ一か所でしか出会えておらず、かつどういう環境を好むのかという予想もあまり立てられていないので1こういう場所にいる可能性を排除してしまっていました……

一度認識できれば俯瞰でも全然違うことに気付けますよね。形状もそりゃ当然違うのですが、それ以上に赤色の鮮やかさとでもいいますか、色彩の面でも差異があります。コケマンネングサはかなり派手です

ここから考えられるあれこれ #

  • コケマンネングサは間違いなく外来種
  • 京都府南部でいくつか見付けているアズマツメクサは在来・外来が不明

ということを前提にしてですね、今回のこの場所の発見は色々と考えさせられる事例になると思うんです

Tillaea内で雑種は生じるのか? #

自分の性分からしてまず考えたいことはこれですね

今の雰囲気ですとコケマンネングサの開花ピークとアズマツメクサの開花ピークにはズレが出るとは思うのですが、しかし両者の開花期間が被らないということもないのでこれ……お互いの花粉がついてしまう可能性はあるのではないかなと。その場合雑種ってできるのかな?というのはかなり気になるところです2

このアズマツメクサが在来のものであれ、外来のものであれ、コケマンネングサがもし雑種を作れるのであれば……存在していること自体が潜在的にアズマツメクサに対するリスクになるのかなと。しかしこの辺であればまずは形態的に似ているアズマツメクサモドキナガエアズマツメクサについて考えた方が良いのか。その辺調べた先人がいるのか、からもっとこの仲間について調べていかないと……

コケマンネングサの好む環境って? #

今回の発見で意外な要素があったのはこの点に関してです

以前自分が発見した地点と海外の自生地の写真からなんとなく礫っぽい感じとか好きそうな印象があり

コケマンネングサを初めて国内で確認・発表されたこちらの短報でも原産地の情報として 『砂質地や砂礫地に生えるという』 と書かれているので……正直今回のような場所にもいるのは意外でした。今後のコケマンネングサの探索において少し意識を変える必要がありますね3

コケマンネングサの侵入経路は? #

なぜそこにいるのか? は外来種だけでなく在来のアズマツメクサでも考え続けたい要素

過去に出会ったポイントでもどういう経路でコケマンネングサが出現したのかは不明なのですが、今回のポイントに関しては更に――ポイント内での分布の偏りから可能性は低いですが――もう1種のアズマツメクサ、これも同じ経路で侵入してきた可能性もあるのではないか?という方面でも考えたくなります。もしかしたら外来種だけどコケマンネングサとは異なるタイミングで入ってきた可能性だってある

結局のところ、今その場所にいる理由に関しては環境がある程度合っていたからで済ませてしまうとして、考えていきたいのはどうやってそこにやってきたのかなんですよね。これはコケマンネングサ以外の外来アズマツメクサたちのことを知ったときから疑問でしたし、新たにコケマンネングサを見付けたことでこいつもどういう形であちこちにいるのか……今回見付けたことでかえって謎に思えてきました

次の目標は #

今回のアズマツメクサ探索は 木津川の右岸側に結構いるので反対側の田んぼにもいるのではないか? がテーマでした。いくつかある市町村のうちの1つのごく一部だけを見るに終わってしまったので――同じ市の残りの範囲を見る、コケマンネングサのいた場所を中心に別の民家でもコケマンネングサがいないか見る、この市は確認ができたとして残りの市町村をひとまず埋めに行く――色々とどうするかは考えられるのですが、全部は一気にこなせないので他の植物観察とのハイブリッドを目指して行程を考えたいですね


残りの市町村を埋めに行く場合は国道にいたシロバナマンネングサの今を見るとかヒメヒレアザミの別地点の現状とか外来種的には面白いネタとセットに出来そうです、距離的には前者になりそう。あとはコケマンネングサに関して出現パターンがまだまだ予想できないので、移動する場所場所全部にいる可能性があるぐらいの意識で赤色を探していきたいですね


  1. どちらかといえば礫っぽい感じが好きなのかとは思ってはいたのですが ↩︎

  2. 出来るのであれば既にこの場所に存在してるのでは?という見方も ↩︎

  3. まあほぼほぼ場所を問わず地面上の赤色を探しているのでアプローチは変わらないかも ↩︎