帰化アサガオ類の紹介 #
帰化アサガオ類まん延防止技術マニュアルでは「(マルバ)アメリカアサガオ・マルバルコウ・ホシアサガオ・マメアサガオの4種が取り上げられている=代表的な種類と考えられる」という構図ですが、それ以外にも色々な種が帰化している状況です。調べてみると結構聞いたこともないような種類が近隣の府県でも帰化事例があって驚かされますね
アサガオ (Ipomoea nil) #
アサガオ類といえばやはり基本はこちら、どノーマルで小学校で育てたりするあのアサガオです
個人的な体験で言いますと、近場で数か所鉢植えではないその辺から生えている「栽培されていない」と言えそうなアサガオに出会ったケースはあるのですが……そのいずれも数年後の今になっては姿を消しているので、他の種たちと比較して
マルバアサガオ (Ipomoea purpurea) #
帰化アサガオ類ではありますが、その一方で他の種と比較して大手の種苗会社などで種子の流通が見られることも多い種類です。つまり栽培個体が逸出して野生化する機会もその分多いのでは?と思うのですが、自分の観察範囲では1か所しかまだ野生化の個体群には出会えていません。ただしその場所はかなりの広範囲に広がっており、野生化した際の厄介さを感じさせます
西洋朝顔として流通するものの一部はこちらの種なのですが、一方で絞り咲きの変異個体が江戸風情といったいかにも日本という感じのする名称で流通するというちょっと不思議な現象も起きていたりします。マルバアサガオ自体は古くより観賞用として栽培されていた歴史もあるので、和風ネーミングを付けること自体も間違ってはいない……のかな?
アメリカアサガオ (Ipomoea hederacea) #
小さい水色の花を咲かせる種で、hederaceaという学名に相応しい切れ込みのある葉の通常のタイプと、マルバアメリカアサガオ (var. integriuscula)と呼ばれる丸い葉のタイプが存在しています。ぱっと見の印象では原始的な改良のされていないアサガオという雰囲気がしている種類で、アサガオに非常に近縁だと紹介されているのも納得の外見です
アサガオとの差異として挙げやすいのは
- 葉:アサガオに丸葉はない……筈、また3裂するタイプで比較してもアメリカアサガオの方が圧倒的に切れ込みが深い
- 萼片:アメリカアサガオの方が毛深く、先端が外側に反る傾向が強い(アサガオは蕾のときは細長くまっすぐという印象)
の2点があります。葉の脇にすぐ蕾がつくのはアサガオ,アメリカアサガオに共通していて、ある程度枝を伸ばした先に蕾を付けていくマルバアサガオはこの点で大きく異なるのがマルバアサガオ―マルバアメリカアサガオ間の判別点の1つになるといえます
ノアサガオ (Ipomoea indica) #
国内に自生するノアサガオ(こちらも国内で本来の自生地以外に定着している事例があるそうです)の系統と、ノアサガオとして流通している外来と考えれられる系統の2つにわけることができます。また、後者に関してはオオバアメリカアサガオ (Ipomoea laerii)という別種として扱う1説もあるそうですが……和名がアメリカアサガオへの近似性を感じさせる一方で、両者の植物にはそこまで似ている部分がないように思えるのでネーミングの面でどうなんだろう?と思う部分があります。両系統ともに自家不和合成が強く種子はできにくいようです
外来系統は栽培していますが、旺盛に成長して周囲の植物を覆い隠す、数メートルにわたってランナーを伸ばして予想外なところから蔓が出てきて絡まり成長する……と、小さい鉢植えで栽培していても厄介者としての実力を遺憾なく発揮しているので、地植えにされて放置された個体が爆発した
マメアサガオ (Ipomoea lacunosa) #
個人的な観測範囲内ではマルバルコウとこちらのマメアサガオと、どちらが多いかを競うほどには見かける頻度の高い帰化アサガオ類です。花の色は違うのですが(マメアサガオの基本は白色、ホシアサガオはピンク+濃紅)ホシアサガオとは非常に似ており、そこから来たヒラミホシアサガオという別名もあります。果実の大きさというか径に対する横から見た高さで考えると、確かにマメアサガオはホシアサガオと比較して扁平な形状をする傾向にあると言えます
その他にもホシアサガオとの相違点として、花柄に存在するイボ状突起の違い(マメアサガオはホシアサガオよりも顕著)や、1つの花枝につく花の数(ホシアサガオは8ぐらいまでつきますがマメアサガオはそこまで多量の花が付くことはない)などがありますが……花の色を見るのが一番!というのが個人的な思いです。その花色においても、ベニバナマメアサガオ(f. purpurata)という
ホシアサガオ (Ipomoea triloba) #
代表的な帰化アサガオ類らしいのですが自分は出会うまでに数年かかりました、でもいざ見つけると最寄り駅にいたという……マメアサガオの項目でも書きましたが、ピンク+濃紅という色合いの花(両者の間に白い領域もありますが)をしております
trilobaの学名を持つだけあって葉は3裂する……のが基本ですが、3裂しない葉の個体も存在します。自分が出会ったケースはかなり丸っこい葉で、マメアサガオとホシアサガオは似ているのですが「マメアサガオではこんな葉は見たことがないな」と思うものでした
イモネノホシアサガオ (Ipomoea trichocarpa) #
芋根と和名に付くだけあって根が肥大し、休眠越冬のできる宿根草としての性質を持っています。ホシアサガオ要素は花の色が似ているだけで、形状や大きさに関してはかなりホシアサガオと異なる模様です
ハリアサガオ (Ipomoea muricata) #
つるに刺状の突起ができるため針とのこと、ただし柔らかく触っても刺さったり痛かったりということはないそうです。別名としてアカバナヨルガオ(赤花夜顔)があるようにヨルガオに近縁で、Calonyction属に分類されていたこともあるようです
結実した果実が下を向くのはマルバアサガオやマルバルコウなどで見られるものと同じ特徴でしょうか。鹿児島県がルーツの種子を入手する機会に恵まれましたので、こちらは2021年に栽培予定です
ヨルガオ (Ipomoea alba) #
名前が混乱しそうになるユウガオ(夕顔)はウリ科のかんぴょうの原料となる植物で、朝顔の仲間はヨルガオです。ただし侵入生物データベースなど、帰化植物の情報として出現する場合はトゲヨルガオという名称で登場します。小笠原諸島では定着しているようです
ルコウソウ (Ipomoea quamoclit) #
漢字で書くと縷紅草。縷という字は「一縷の望み」のような表現で見かける字で、糸・糸すじなどの意味を持ち、これは葉の雰囲気を表したものですね。紅はそのまま花色を示すのですが、白色の個体と、赤色と白色の不完全優性・それとは別の遺伝様式でも出現するらしいピンク色が存在しています2
マルバルコウ (Ipomoea coccinea) #
個人的にはマメアサガオと同じぐらいか、それ以上に出会う機会の多いのではないかと感じている帰化アサガオ類です。こちらの別名としてツタノハルコウが挙げられているのですが、下記のI. hedelifoliaとして別にツタノハルコウの和名が与えられている植物が存在するので混同には注意が必要です(過去にはツタノハルコウが変種扱いだったこともあるようです)
ハゴロモルコウ #
ハゴロモルコウソウ,モミジルコウ,モミジルコウソウなど色々と名称があってどれが正式な和名かってなると……どれなんでしょう?学名もIpomoea x multifidaとされることが多いのですが、異質四倍体で稔性のあるという情報があるIpomoea × sloteriのほうが正しいのか……文献に当たってもう少し調べないといけません。因みに、人工的にルコウソウとマルバルコウを交配して作出した個体は不稔性となる1そうで、ハゴロモルコウは両者の交雑種と紹介されることが多いのですが単純な雑種ではないことは間違いありません
ツタノハルコウ (Ipomoea hedrifolia) #
1998年に神奈川県で確認されたのが国内での初確認、そのことから移入は比較的新しいといえる種です。葉っぱがかっこいいので個人的に一押しの種なのですが、3裂するかっこいい葉と比較的マルバルコウに似ている葉と2タイプ存在する模様です。比較的知名度も低いためか、3裂葉の個体でも 「ちょっと変なマルバルコウがいるぞ」 と認識されるケースがあるようです(自分もそうでした)
自分の知る範囲では国内の通常花色タイプは3裂葉、黄花タイプで流通するものの中にマルバルコウ様の葉が存在するようですが、海外の写真では通常の花色+マルバルコウ様の葉の個体も存在しているので、今後国内でもその組み合わせが発見されるかもしれません
個人的に観察できた範囲では、果実の果柄が曲がらない・種子の表面の差異などがマルバルコウと判別するにあたっての相違点として重要だと思われます。ツタノハルコウに関しては ツタノハルコウについてのページにも詳しく記述しております
ヨウサイ (Ipomoea aquatica) #
自分の中ではこの植物は空心菜(クウシンサイ)という認識でしたが、標準和名はヨウサイだそうです。エンサイまたはエンツァイ(台湾語より)や花がアサガオに似ていることよりアサガオナなどの別名でも流通しているようで、種苗会社が扱う際の名称としてはエンサイが多いのかな?という印象
ネコアサガオ #
インターネット上の個人サイト上などでの情報、並びに参考文献1ではIpomoea bifloraの学名が、一方で侵入生物データベース3ではIpomoea hardwikiiの学名が使用されており……どっちなんだ?というところから調べてみないと
ゴヨウアサガオ (Ipomoea horsfalliae) #
(上記の写真4枚は咲くやこの花館にて撮影した var. briggsit となっていた変種です)
深く5裂する葉を見て「五葉」の和名が与えられたのでしょうか、植物園でわけのわかんないつる植物がいるぞ!と写真を撮って後からサツマイモ属の仲間だったのかと気づく程度にはアサガオっぽさがありません。フリマサイトにて挿し木苗が販売されているものを見たこともあるので、その方曰く「沖縄でも珍しい」とのことですが植物園以外でも栽培・流通はあると思われます
タイワンアサガオ (Ipomoea cairica) #
タイワンアサガオの名称は侵入生物データベース3より。YListではモミジヒルガオとなっており、沖縄県対策外来種リスト4ではモミジバヒルガオとなっています。個人的にはアサガオ類に○○ヒルガオの和名はちょっとよろしくないんじゃないかと思うのでタイワンアサガオ派ですが、これはこれで「台湾原産なの?」というイメージを与えかねないという。そしてモミジという名前に関しても、切れ込みがかなり深くまでいく関係であまりモミジっぽく見えない葉をしているので和名の名づけの難しさを感じさせられます
沖縄県に帰化している関係なのか、琉球アサガオの中でももみじ葉タイプとしてこの種ではないか?と思われるものの流通を確認しています。更に白花個体の流通もあったようです
情報整理中の帰化種たち #
ヤツデアサガオ (Ipomoea digitata) #
コバナミミアサガオ (Ipomoea eriocarpa) #
ヒメノアサガオ (Ipomoea obscura) #
イモネアサガオ (Ipomoea pandulata) #
キクザアサガオ (Ipomoea pes-tigridis) #
タマザキアサガオ (Ipomoea pileata) #
フウリンアサガオ (Ipomoea pulchella) #
コバノモミジアサガオ (Ipomoea quinata) #
この辺は情報の整理中です……
帰化アサガオ類ではない(多分)けど流通してる種たち #
自分の知らないところではもしかしたらこいつらも帰化しているのかもしれないやつら
ソライロアサガオ (Ipomoea tricolor) #
西洋朝顔という名称は色々な種類に対して使われますが、どの種類を指しているかとなるとこのソライロアサガオのことが一番多いと思われます。メジャーな品種は’ヘブンリーブルー’というもので、ソライロアサガオの和名も納得の綺麗な色をしています。その他にも’パーリィゲート’や’フライングソーサー’、‘ブルースター’などの品種が存在し、流通しています
サツマイモ (Ipomoea batatas) #
Ipomoea自体がサツマイモ属という和名ですし、属の中心と言っても過言ではありません。当然野菜の苗として流通している植物ですが、それ以外でも観賞用としてサントリーよりテラスシリーズ®として、葉の色や形状に特徴のある個体が販売されております